
更新日:2025.05.01
目次
企画書や報告書をいくつも並行で抱えていると、いつの間にか「構成を直す」「図表をそろえる」といった単調なタスクが山積みになります。手は動いているのに、頭はアイデアの棚卸しさえできない。そんな“作業感”を覚えた瞬間こそ、生成AIを使い始める絶好の機会です。
AIを導入するとどうなるのか。イメージは電動アシスト自転車です。ペダルをこぐ役割は変わりませんが、上り坂ではアシストモーターが力を貸してくれる。結果、同じ時間でも息切れせず、遠くまで進めるようになります。資料づくりも同じで、AIに繰り返し作業を任せれば、人はストーリー設計や意思決定といった“考える仕事”に専念できます。
資料づくりのプロセスを細かく見ると、次の6ステップに分けられます。それぞれ「AIに任せるべきか」「人が担うべきか」を整理しておきましょう。
まずは「誰に、どんな行動を起こしてほしいか」を決める工程です。ここがぼやけると、資料全体が迷子になります。経営目標や社内方針を踏まえ、担当者自身が時間をかけて検討してください。AIは壁打ちの相手にはなりますが、最終判断は人が行うべきです。
読み手の役職、関心、決裁権限を具体的に想定し、ペルソナを組み立てます。上司の“ウケ”だけに頼るとピントがずれるので要注意。AIにひな形を作らせ、実在の利害関係者情報で肉付けすると精度が上がります。
論理の骨格を設計する段階です。AIに複数案を生成させて比較すれば、「そんな切り口があったか」という発見が生まれます。人は論点の飛躍や整合性をチェックし、方向性を定めましょう。
データや一次情報を集めてストーリーを裏付けます。ここはAIの検索・要約能力が光る領域。引用元を自動で示してくれるツールを選ぶと安心です。ただし、数字や事例の真偽を最終確認するのは人の役割です。
Copilot などでドラフトを作成し、社内テンプレートに合わせて体裁を整えます。AIがページ構成のたたきを用意してくれるので、担当者はメッセージの順序やボリュームを調整することに集中できます。
配色、余白、フォントといった最終仕上げです。レイアウトはAIに任せ、ブランドガイドに沿った微修正を人が行うと、スピードと品質のバランスが取れます。
ゴールとターゲットは“資料のKPI”。ここはAIに委ねず、人が深く考えるほど成果が上がります。
“とりあえず情報を集める”は時間泥棒。必ず仮説を立て、それをAIに検証させる流れを徹底しましょう。
資料づくりは「方向性を固めるフェーズ」と「説得して通すフェーズ」で求められる出力が大きく変わります。
この段階では視野を広げることが目的です。
例:「○○業界の課題を30件、MECE(重複なく漏れなく)で列挙してください」
例:「列挙した課題を5つの軸で整理してください」
※この時点で「提案書を完成させて」と丸投げすると、材料不足で小さくまとまりがちです。
次に、提案を通すための障壁や反論を洗い出します。
例:「営業部長が想定する懸念点を5件挙げ、それぞれに対する反証を提示してください」
例:「この骨子を30枚のスライドに分割し、1枚あたり1メッセージで整理してください」
ターゲットと目的を具体的に示すほど、AIの回答は鋭くなります。
生成 AIを活用した資料作成サービスは星の数ほどありますが、ここでは「ビジネス用途で導入しやすいか」を基準に4ツールを厳選してご紹介します。
Microsoft 365に標準搭載されるAIアシスタントです。2025年1月のアップデートでNarrative Builder(Wordファイルを読み込みストーリー化)や150枚までの自動要約が追加され、ドラフト作成から要点整理まで一気通貫で支援するようになりました。さらに、同年4月発表の「Copilot Actions」により、40言語への翻訳や社内テンプレート適用をワンクリックで自動化する拡張予定も公表されています。
得意領域:既存Word/PDF→PPT化、長尺資料のサマリー、社内フォーマット自動適用
導入の留意点:Microsoft 365+Copilotライセンスが前提。情報統制の観点でテナント設定と権限管理を忘れずに。
日本発のスライド自動生成サービスで、1,000種類超のデザインテンプレートを備えています。2025年4月には“AIスライドデザイン生成β”を追加し、内容入力だけで0からデザインを組み上げる機能も先行提供中です。インターフェースは完全に日本語。現在はPCブラウザ版のみですが、UIがシンプルで初学者でも迷いにくい設計になっています。
得意領域:ストーリー設計+スライド作成を短時間で回したい案件(営業提案・社内稟議など)
導入の留意点:英語レイアウトはやや調整が必要。チーム共同編集機能は段階的に強化中です。
参考:イルシル
ブラウザベースでプレゼン・ウェブ・ドキュメントを横断生成できるオールラウンド型。リアルタイム共同編集やPPT / Google Slides / PDF へのエクスポートも公式ページで明記されています。100以上のブランドテーマを取り込めるので、デザイン統一もスムーズ。導入企業は50万社を超え、ユーザー数も5,000万を突破したと発表されています(2025年2月時点)。
得意領域:多拠点チームでのコラボ、ウェブ公開やリンク共有が多いプロジェクト
導入の留意点:ブランドガイドラインが厳格な場合は、初期にテンプレートとテーマのすり合わせを。
参考:Gamma
「テキストを貼り付けるだけで即ビジュアル化」というコンセプトのツール。公式サイトではPNG / SVG / PDFのエクスポートや、1クリック図解生成をうたっています。ドキュメント内で編集・再生成が完結するため、複数回のキャプチャ貼り替えを大幅に削減できます。
参考:Napkin AI
狙いはハードルを下げること。 「まず1枚」をひねり出す工程に時間をかけない。
実践例:Copilot に「市場動向セクションの下書きを」→5分でラフ完成。担当者はすぐ骨子レビューへ。
効果:着手までのムダな逡巡が消え、チーム全体の“待ち時間”も短縮。
加えるべき3要素
自社の固有データ(売上推移・顧客声など)
現場の一次知見(担当者だけが知る障壁・成功要因)
判断の背景(経営課題や組織文化)
ポイント:そのまま流用すると“どこかで見た資料”になりがち。自社色を差し込むことで説得力が跳ね上がる。
チェックリスト
出典は一次ソースか?
数字は最新か?(年度・四半期で古さを見落としがち)
競合視点で不利なデータを無視していないか?
ツール補足:Perplexity や chatGPT の“引用リンク”は便利だが、リンク切れ・誤解釈が混在する場合もある。必ずリンク先本文を確認し、必要なら PDF 保存しておくと監査対応もスムーズ。
メソッド:「3回読み」ルール
全体を通読し、流れが自然かを確認
ターゲット視点で「Why me?」「So what?」を投げる
反論想定で突っ込みを入れ、穴をふさぐ
コツ:部門横断レビューを1回挟む。想定読者に近い同僚に 15 分で読み切ってもらい、違和感をメモして返してもらうだけでも精度が上がる。
ステップ導入モデル
ストーリー試作(AI 30 %)
ファクト検索(AI 60 %)
スライドドラフト(AI 80 %)
最終統合・デザイン(人 70 %)
理由:工程ごとに “AI → 人 → AI” とバトンを渡すことで、品質とスピードのバランスが取れる。完全自動化を急ぐより、リスクを抑えながら ROI を高める現実的なアプローチ。
「AI女子」は、企業の生成AI活用・浸透を支援する常駐型DX人財サービスです。
「AI女子」は生成AIはもちろんのこと、Excel、VBA、RPA、IT、デジタルマーケティングなどのスキルと実務経験を兼ね備えているプロ集団です。そのため、生成AIだけではなく、各技術を掛け合わせた本質的な課題解決・業務効率化のサポートが可能です。
数多くの企業に常駐してきた経験から、現場のボトルネック発掘や課題特定、有効施策の提案・実施、分析・効果検証を得意とし、「慎重なPoCを行い生成AIツールを導入したものの社内活用率が低い」「費用対効果が低い・社内で目立った成果がない」「人手不足でPDCAが回っていない」といった課題に向き合い、生成AI活用促進をサポートします。
生成AI活用促進のための戦略・施策策定、データ加工・作業自動化、貴社ユースケースの発掘・展開、分析・効果検証など、貴社の課題・フェーズに合わせた、最適な人財をアサインし効率的にご支援いたします。
生成AIに関する各種問い合わせに迅速対応し、専用ヘルプデスクでサポート。
定期的な勉強会や研修を通じて、社員のリテラシー向上と活用率の向上。
ポータルサイトやメルマガを活用し、最新情報や成功事例を効果的に発信。
貴社独自のプロンプト作成、既存プロンプトの添削、各部署へのヒアリングを通じた高度なプロンプト作成を実施。
生成AIに読み込ませるためのデータ加工・クレンジング、RAG検証。活用ログの解析や集計分析作業を請負
VBA、RPA、GASなどを活用したスクリプト構築や、生成AIと他ツールの連携による業務効率化を推進。
生成AI導入・活用促進に合わせた運用体制や目標設定の見直し、業務プロセス全体の最適化、部門間連携を強化するための仕組みづくり・推進体制構築を支援。
生成AIは、発散・整理・図示といった繰り返しタスクを高速化します。その結果、
リードタイムの短縮
説得力の向上(引用付きデータで裏付け強化)
バージョン管理のストレス軽減(共同編集で最新版が一目瞭然)
といった効果が期待できます。ただし、方向性の決定と最終判断は人しか担えません。まずは小さな案件で「頭脳=人、手足=AI」の分業モデルを試し、DX推進の成果を社内に示してみてはいかがでしょうか。