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DX推進ガイドラインとは?2025年の崖に備える企業の実践ロードマップ【事例10社付き】

作成者: Admin|Apr 22, 2025 12:45:00 AM

本記事では、DX推進に関する悩みに応えるべく、実際に取り組みを進める国内企業10社の成功事例を交えながら、ガイドラインの実務的な活用法を詳しく解説します。 「DXを推進しろ」と言われ続けてきたけれど、何から始めてよいかわからない。社内に熱量がない。現場がついてこない。企業ではこうした声が多く聞かれます。経済産業省が策定した『DX推進ガイドライン』は、単なるお題目ではなく、実務への落とし込みを見据えた内容です。本記事では、現場目線でガイドラインの要点を解説し、自社の変革に活かせる実務対応のヒントをお届けします。

DX推進ガイドラインとは何か?

経済産業省による策定の背景

2018年、経済産業省は日本企業の「2025年の崖」を懸念し、既存のレガシーシステム依存からの脱却を促す形で『DX推進ガイドライン』を公開しました。目的は、IT投資を単なるコストと捉えるのではなく、経営課題の本質的な解決に資する変革の手段として再定義することです。

多くの企業が、老朽化したシステムを抱えたまま業務を続けており、そのままでは業務改革デジタル変革が進まないという危機感が背景にあります。ガイドラインは、経営戦略と連動したITガバナンスの強化を目的とし、企業が取り組むべき方向性を明示しました。

また、2022年には『DXレポート2.2』が公開され、ガイドラインの内容も進化しています。これにより、技術導入のみにとどまらず、「企業文化」や「人材戦略」まで踏み込んだ視点が強調されるようになりました。さらに、デジタル庁の設立により、政府全体としてのDX支援体制も強化されています。

ガイドラインが求める「経営のあり方」

DX推進において、最も重要視されるのが経営者によるビジョン策定トップダウンによる旗振りです。ガイドラインでは、DXを「経営改革」として位置づけ、経営層が主導する体制整備を強く求めています。

たとえばある大手製造業では、社長が率先してDXビジョンを社内に共有し、ステークホルダー調整を行いながら、全社の方向性を統一しました。その結果、現場レベルでも変化に対する理解が進み、スムーズな組織改革が進行しました。

「ITシステムの構築」の視点から読み解く

ガイドラインでは、システムの再構築に際して「ユーザー部門連携」「クラウド移行」「ITインフラ整備」の3点を強調しています。

例として、りそなホールディングス(りそな銀行)では、全社的なDX推進の一環として、勘定系を含む基幹系システムの刷新に着手。従来の枠にとらわれず、クラウド技術を全面的に採用し、行内外のデジタル人材と協業しながらプロジェクトを進行しています。

プロジェクトの初期段階からユーザー部門(現場)と密に連携し、業務プロセスの標準化と自動化を同時に推進。さらに、新システムの開発・移行にあたっては外部ベンダーとの適切な役割分担を明確にし、段階的な実装を計画することで、リスクを抑えながらDXの効果を最大化しています。

参考:デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2023」の選定について|ニュースリリース|りそなホールディングス


DX推進における3つの課題と乗り越え方

成果が出ない原因はどこにあるのか?

「DXをやってはいるが、目に見える成果が出ていない」──この課題に直面する企業は少なくありません。その多くは、KPI設定が曖昧、ROI評価が不十分といった基本設計の甘さに起因しています。

②大成建設は、帳票処理や社内承認フローの電子化に加えて、RPAの活用による業務自動化を段階的に推進。単なるデジタル化にとどまらず、業務フローそのものを見直す取り組みを実施し、全社的な業務最適化を進めました。

結果として、年間数千時間の削減効果を実現しており、現場の作業負担の軽減と事務工数の圧縮に成功しています。特に「一度登録したデータをさまざまなシステムに自動連携する仕組み」を構築したことで、業務の標準化と属人化解消にもつながっています。

参考:建設DXの未来、大成建設「T-TerminalX」目指す「工場のような建設現場」

「使いこなせない」技術ではなく「活かしきれない」組織

生成AIやクラウドサービスなど、技術そのものの導入は進んでいても、「使いこなされていない」「現場に浸透しない」といった課題に悩む企業は少なくありません。しかし、問題の本質は技術の難しさではなく、それを組織としてどう活かすかの仕組みと文化の欠如にあるケースがほとんどです。

この点で参考になるのが、株式会社パルコの取り組みです。パルコでは、生成AI(ChatGPT)を業務に取り入れる試みを開始したものの、導入当初は現場での活用がなかなか進みませんでした。多くの社員が「どう使っていいかわからない」「自分の業務に活かせる実感がない」と感じていたのです。

そこで同社は方針を転換し、まず各部門へのヒアリングを実施。業務上の困りごとや課題を丁寧に拾い上げ、「どのような業務でAIが役立つか」を現場と一緒に考えるプロセスを取り入れました。また、OJT形式の生成AI活用研修や、少人数制のワークショップを開催し、具体的な利用シーンや操作方法を現場目線で伝えるようにしたのです。

さらに、現場での活用事例をナレッジとして蓄積・共有し、社内ガイドラインの整備成功事例の可視化にも取り組みました。その結果、マーケティング資料のたたき台作成や社内報の文案生成、アイデア出しなど、日々の業務のなかで生成AIを活用する社員が急増。ツールの導入から“活かす文化”への転換が、組織全体のDX推進を後押ししています。

このように、技術を“使えるかどうか”ではなく、“活かす組織を作るかどうか”にフォーカスを当てることが、DXの成果を左右する重要な要素となるのです。

実際、同社では生成AIの活用により、資料作成やアイデア出しなどにかかる作業時間を平均で20%以上削減したと報告されています。

参考:パルコ、伊藤園が生成AIで広告制作 見えた広告主側の理想と現実

社内浸透を妨げる壁とその突破法

DXを推進する際に多くの企業が直面するのが、「それはIT部門の話でしょ」という現場の当事者意識の欠如です。部門ごとにサイロ化が進み、横断的な情報共有や連携が困難になるケースは少なくありません。経済産業省の『DX推進ガイドライン』でも強調されているように、部門横断的な体制構築と現場の巻き込みは、DXの成功に不可欠な要素です。

この課題に対して、オムロン株式会社は“現場主導のDX”という独自のアプローチで突破口を開いています。製造部門を中心に、まずは小規模なラインや現場単位でパイロット運用を実施。そこで得られた改善の知見をもとに、IT部門とOT(現場技術部門)が連携しながら、横展開できる仕組みを整えていきました。

特徴的なのは、改善活動の主導権を現場に持たせたことです。現場の担当者が自ら課題を抽出し、改善案を立て、実行する。そしてその結果を社内のナレッジ共有基盤に蓄積し、他部門にも広く展開。トップダウンではなく、ボトムアップ型の自走力を高める仕組みをDX推進に組み込んでいるのです。

オムロンのように、現場で小さな成功体験を積み重ねながら、全社展開へとつなげていくモデルは、社内浸透を自然に促し、マインドセットの変化と組織文化の進化を同時に実現できる有効な手法です。

参考:無線技術の活用で製造現場は何が変わるのか、オムロンらが協創プロジェクト:スマートファクトリー(1/2 ページ) - MONOist

ガイドラインを実務に落とし込む5つのステップ

ステップ1:経営戦略にDXを組み込む

DX推進の第一歩は、単なるIT導入ではなく、経営のど真ん中にDXを据えることから始まります。つまり、DXをIT部門の施策として扱うのではなく、事業モデルそのものを変革する戦略的取り組みとして位置づけることが不可欠です。

この点で、ダイキン工業株式会社の事例は極めて示唆に富んでいます。同社は、空調機器メーカーから脱皮し、「課題解決型企業」への変革を掲げてDXを本格化。製品単体を販売するのではなく、空調機器の稼働データを活用し、「快適性の最適化」や「故障の予兆検知」といった付加価値の提供にシフトしています。

このような“製品+サービス”型のモデルへの転換において、ダイキンはDXを中期経営計画に明示的に組み込み、全社的に進捗を管理。推進体制としては、CPS(サイバーフィジカルシステム)推進室を設置し、経営戦略・現場・ITが一体となってDXを加速させています。

また、DXの成果や進行度合いについては明確なKPI(成果指標)を設定し、経営層による定期レビューを実施。これにより、「戦略としてのDX」と「現場の実行」のあいだにギャップが生まれないよう、組織的な整合性とスピードの両立を実現しています。

ダイキンのように、経営層が自ら旗を振り、事業の根本を再定義するDXを全社的に進めることで、単なる“ITプロジェクト”に終わらない、本質的な変革が可能になるのです。

参考:ダイキンがサービス支援AIを内製、活用進めた4度の「偶然の出会い」

ステップ2:既存業務の棚卸しと再設計

DXの実効性を高めるには、まず現場で行われている業務を可視化し、ムダ・重複・属人化の実態を把握することが出発点です。棚卸しを行うことで、「何を変えるべきか」「どこに優先してテコ入れすべきか」が具体的に見えてきます。

このステップを実践しているのが、リクルートです。同社では、「営業日報の作成」「進捗共有」「社内向け資料作成」といった、営業職の日常業務に潜む非効率を洗い出しました。その上で、生成AIや独自ツールを活用し、これらの業務の大半を自動化・半自動化する施策を進めています。

特に営業日報は、音声入力+AIによる要約生成によって、従来の3分の1以下の時間で記録できるようになりました。また、社内資料もテンプレートと自動入力の仕組みによって作成時間を大幅に短縮。これにより、1人あたり年間数百時間分の工数削減を実現しています。

空いた時間は、顧客の課題理解や提案準備など、付加価値の高い業務に再配分され、結果として営業成果の向上にもつながっています。

DXとは単にデジタルツールを導入することではなく、「業務そのものを再構成すること」であると、リクルートの事例は教えてくれます。

参考:リクルートの「実戦的」AI活用法

ステップ3:IT基盤の見直しと内製化の強化

DX推進においては、ITインフラの再設計も不可欠です。老朽化したオンプレミス型のシステムでは柔軟な変更が難しく、業務に合わせた改善が困難です。ここではクラウド移行が大きな選択肢となります。

たとえば、三井住友トラスト・システム&サービスでは、勘定系システムのクラウド刷新に取り組み、アジャイル開発を通じた内製化比率の向上を実現。現場部門との協働によって、短期間での業務改善サイクルを実装しています。

さらに、外部ベンダー任せではノウハウが蓄積されにくくなるため、内製化比率を高め、アジャイル型の開発体制を自社内で構築することが望ましいでしょう。IT人材が不足している企業では、外部リソースと共創型プロジェクトとして進める事例も増えています。

参考:三井住友銀行が新勘定系システム移行を2025年1月開始、2026年度中に完了予定

ステップ4:生成AIを活用した業務効率化

近年のDXで注目されているのが、生成AIを活用した業務の効率化です。特に「文書作成」「議事録生成」「問い合わせ対応」など、人の判断がある程度必要だが定型性のある業務において、生成AIの導入は大きな効果を発揮します。

重要なのは、単にツールを導入するだけでなく、活用ルールの整備と対象業務の明確化をセットで進めることです。

実際の事例として、オープンハウスグループでは、営業部門において物件紹介メールや顧客向け案内資料の自動生成に生成AIを導入しました。活用の定着を図るために、テンプレートの整備と利用マニュアルを用意し、現場の混乱を防ぐ工夫もされています。

その結果、営業担当者の月間業務工数を15〜20%削減することに成功。さらに、文面の統一感が向上したことで、顧客対応の質も改善されています。

このように、生成AIを効果的に業務に組み込むには、「どこで使うか」「どう使うか」まで設計するプロセスが不可欠です。

参考:オープンハウスグループが生成AIの実証実験、推奨物件を自動生成 | 日経クロステック(xTECH)

ステップ5:現場と連携した人材育成・チーム設計

DXの成否を左右する最後のステップが、「人材」と「チーム設計」です。どんなに優れた戦略やツールが整っていても、それを活用できる人がいなければ、DXは現場に根づきません。

この点で注目されているのが、福山通運株式会社の取り組みです。同社では、業務負荷の高かった帳票のデジタル化を進めるにあたり、各エリアにDX推進の責任者を配置。支店主導で導入を進める体制を整え、現場の理解度と納得感を高めています。

さらに、ユーザー部門からの意見を吸い上げる仕組みや、現場担当者向けの研修・マニュアル整備にも力を入れており、支店ごとの成功事例を他拠点へ展開する体制も構築。本部と現場が密に連携しながら二人三脚でDXを進める姿勢が、着実な成果につながっています。

このように、DXを「誰かがやること」ではなく、組織全体で担う取り組みへと昇華させるためには、人材育成とチーム設計の仕組み化が不可欠です。

参考:日本通運株式会社|AI-OCR市場シェアNO.1のDX Suite

よくある誤解とガイドラインの正しい読み方

単なるIT化とDXの違い

DXと聞くと「システムの導入」や「業務のデジタル化」といった、いわゆる“IT化”と混同されがちです。しかし、DXは企業の構造自体を変革するプロセスであり、ガイドラインでもそれは明確に定義されています。

単なるIT化は、既存業務の延長線上にツールを加えるだけの対応ですが、DXは意思決定のスピードや部門間連携、組織文化の変容までも視野に入れた包括的な取り組みです。

その実践例として、島津製作所では、部門ごとに異なっていた業務プロセスや基準を見直し、全社共通の業務フレームワークとKPI(共通指標)を導入しました。これにより、業務の進捗状況や成果がデジタル上で可視化され、部門間の連携と判断のスピードが大きく向上しました。

また、経営層もリアルタイムでデータを確認できる体制を整えたことで、属人的な判断から脱却し、データドリブンな意思決定が定着しています。

このように、DXとは単なるITの導入ではなく、企業の考え方や仕組みそのものを“変える覚悟”を伴う改革なのです。

参考:DX担当役員メッセージ

「ガイドライン=テンプレ」ではない

たとえばガイドラインには、「経営ビジョンと整合したIT戦略になっているか?」「現場からのフィードバックをシステムに反映できる体制があるか?」といった問いが示されています。これらは自社の取り組みを点検するフレームワークとして活用できます。

ガイドラインは「こうしなさい」という命令ではなく、自社にとって最適な実装ロードマップを描くための“問いかけ集”です。そのため、業種・業態・事業フェーズによって解釈と運用方法は大きく異なります。

たとえば、IT企業であってもバックオフィス業務ではアナログ業務が多いことがあります。部分的にでもスモールスタートして成功事例をつくることで、自社に合った推進方法を探ることが可能です。

中堅・大手企業こそ柔軟な解釈が必要

中堅・大手企業では、制度や慣習が強く固定されており、変化を起こすのが難しい傾向にあります。しかし、それだけにDXのインパクトは大きく、成功すれば全社的な業務標準化人材再配置に繋がります。

そのためにも、「まずは一歩」を踏み出す組織風土づくりが不可欠です。経営層の本気度と現場の納得感、この両輪がそろって初めて、ガイドラインが生きたものになるのです。

コクーの「AI女子」とは?


「AI女子」は、企業の生成AI活用・浸透を支援する常駐型DX人財サービスです。

「AI女子」は生成AIはもちろんのこと、Excel、VBA、RPA、IT、デジタルマーケティングなどのスキルと実務経験を兼ね備えているプロ集団です。そのため、生成AIだけではなく、各技術を掛け合わせた本質的な課題解決・業務効率化のサポートが可能です。

数多くの企業に常駐してきた経験から、現場のボトルネック発掘や課題特定、有効施策の提案・実施、分析・効果検証を得意とし、「慎重なPoCを行い生成AIツールを導入したものの社内活用率が低い」「費用対効果が低い・社内で目立った成果がない」「人手不足でPDCAが回っていない」といった課題に向き合い、生成AI活用促進をサポートします。

生成AI活用促進のための戦略・施策策定、データ加工・作業自動化、貴社ユースケースの発掘・展開、分析・効果検証など、貴社の課題・フェーズに合わせた、最適な人財をアサインし効率的にご支援いたします。

現在、「AI女子」導入企業様で行なっている主な業務例

問い合わせ対応・ヘルプデスク運営

生成AIに関する各種問い合わせに迅速対応し、専用ヘルプデスクでサポート。

勉強会・研修の実施

定期的な勉強会や研修を通じて、社員のリテラシー向上と活用率の向上。

最新情報・事例のコンテンツ作成・発信

ポータルサイトやメルマガを活用し、最新情報や成功事例を効果的に発信。

プロンプト作成・検証

貴社独自のプロンプト作成、既存プロンプトの添削、各部署へのヒアリングを通じた高度なプロンプト作成を実施。

データ整備とRAG検証

生成AIに読み込ませるためのデータ加工・クレンジング、RAG検証。活用ログの解析や集計分析作業を請負

定型作業の自動化

VBA、RPA、GASなどを活用したスクリプト構築や、生成AIと他ツールの連携による業務効率化を推進。

業務設計・戦略策定

生成AI導入・活用促進に合わせた運用体制や目標設定の見直し、業務プロセス全体の最適化、部門間連携を強化するための仕組みづくり・推進体制構築を支援。

まとめ

生成AIは、企業の業務効率化や新規事業開発、さらには競争力の向上に大きく貢献します。しかし、その導入と活用には明確な戦略と専門的な知識が必要です。本記事で紹介した成功事例や解決策を参考に、自社に最適な生成AI活用方法を見つけてください。

また、「AI女子」の人財サービスを活用することで、専門人材不足という課題をクリアし、生成AIの可能性を最大限に引き出すことができます。「AI女子」は、企業の生成AI活用を全面的にサポートし、業務設計からプロンプト作成、データ整備、検証、社員教育までトータルで支援いたします。ぜひ一度、「AI女子」にお問合せください。